3521+d
3521+dというカレンダーをつくりました
2021年の夏頃に「つくろう」と決めてから約6ヶ月
仕事のスキマ時間を見つけ制作を進めてきました
その制作意図や背景をまとめようと思います
┃Works
・Calendar : 3521+d
・Material : 和紙 from 徳島
・Printing:活版印刷 from 東京
・Spential Thanks:kako, mai, yutto
┃main statemeent
カレンダーの制作を決めたのは
時の有限性の再認識を行おうと思ったことがきっかけです
いつしから人は時の流れを二次元的に捉えるようになり
時間は“過ごす”ものから画一的な枠に“埋める”ものに変わっているように感じます
産業化が進み、デジタル化された世界の中で日々のスケジュールを管理するようになると
「6時から7時」「11時から12時」といった形で
枠に埋めるように時間を使うようになりました
しかしそれは人間が本来過ごすべき時の過ごし方だろうか?と僕は疑問に思う
本来時の流れとは
その流れ方や早さに安定性・規則性は無く
それら自体が常に変化するものであるため
極めて不規則で不安定な存在のはず
つまり時に枠をつけることで二次元的に捉えるべきではなく
極めて多次元の中で時間を捉えるべきだと考えています
時間を過ごすということは
予め決められた枠に埋めるような物理的な考え方ではなく
「気づいたら時間が経っていた。」
「とてつもなく長く感じた。」
そんな時の変則的な感覚を常に味わうことであり
その状態こそが美しい状態なのではないかと
┃Ideation
世の中に残るカレンダーの形に違和感を覚えるのは
それは現状のカレンダーという概念が時を規則的な枠に捉えていることにあります
不規則性を持つ時の流れが
極めて二次元的に扱われてしまっている
前述の通り
僕は時の美しさとはその不規則性にあると思っています
だからこそ、元々の美しさを取り戻すクリエイションを行いたかった
その美しい時の流れ
そして本質的な人間性を取り戻すには
”新しい不規則性”をデザインする必要があった
┃Concept Making
不規則性をデザインの力を使いカレンダー上で表現することで
時の有限性を再認識をさせる
これが今回のデザインコンセプトを発想するための出発地点
このコンセプトを表現するために
まずは独自の「不規則のリズム」をデザインしなければならない
このリズムを生成するために
通常のカレンダーが使っている1ヶ月を1ページの中で表すという構成をやめることにしました
時間のダイナミックさを表すために
時の流れ、そしてリズムを捉え直し
3ヶ月、5ヶ月、2ヶ月、1ヶ月と新たな独自リズムを構築
3ヶ月という一つのページから
急激に5ヶ月というページに移動することで
そのときだけは、ありあまる時間を持っている感覚を持たせる
そしてそのような3ヶ月や5ヶ月といった単位の時間から
急にその時間は2ヶ月、1ヶ月と量が減ることになる
そして最後の月
decemberは その月と最後の3日間に切り分けた
残された時間が少ないことが理解できると途端に人は焦りだす
むしろ残された時間が少ないと理解できた瞬間にのみしか
人はその希少性や重要性に気づくことができないとも言える
そんな現象をカレンダーから生み出そうとしました
3ヶ月 5ヶ月 2ヶ月 1ヶ月
3521+dは
カレンダーに不規則性を表出させることで
人間に時間の有限性を再認識させることはできないか?
その問いと共に新たな表現を試みたカレンダーです
┃Design
全体のデザインをするに当たって
コンセプトから制約を設けました
・1週7日制を用いない
・曜日は使わない
・土日祝日を記さない
・365日区切り以外は用いない
・一つのフォントに統一しない
・一つのフォントサイズに統一しない
この6つ
これはカレンダーという一定の機能を保ちながらも
時間の有限性を表出させるための制約になっています
僕にとってデザインは
機能と表現のバランスのことであって
どこまでの表現を創り出し、どこまでの機能を担保するのか?
という問いに対する回答だと思っています
┃UN-Update
この3521+dというカレンダーができて手にとった瞬間
ああ、これは一生使えるものなんだ
アップデートしなくていいんだ
そんな安心感がありました
というのも上記のデザインの制約で記載した通り
このカレンダーには曜日がありません
そうすると
うるう年といった例外を除いて
このカレンダーはいつでも使えることになります
誰しもがスマホを片手に生きている時代では
物事が常にアップデートされる世界に生きています
作る人は常に使う人の声に耳を傾け
便利なものを届けていきます
アップデートというものはふと考えると
思想を詰め込んだものというよりかは
多くの使われる人の声を拾い上げ最適解を見つけていく行動
そう思うとアップデートしないものにこそ
思想を込められるのではないかと気づくことができました
┃Thoughts
僕の表現哲学は既存の概念への抵抗であったり
可能性の表現であったりします
ただそれは単なる批判ではなくて
世の中に新しい視点があることや
それぞれの人が持つ視点を自由に表現していいんだと
表現を見た人に伝えたいのが根底の思いです
今 言葉や形、概念になっているものは
過去のだれかが作ったもの
だから皆がそこに当てはまる必要はないと思う
言語や概念は僕ら人間活動にとって
とても”便利なモノ”ではあるけれど
一方で既存概念の中でのみ思考するということは
他人の考えに依存することでもあり
多くの可能性を潰していることにも通づると僕は思っている
僕ら人間に与えられた最高の力は「想像性」
他者の概念で生きるのではなく
自分の概念を創り出す楽しみを味わって生きることで
初めて思考は自由を得ることができ
豊かな人生に繋がると僕は思う
このカレンダーはそんな思いを表現するための一歩目です
これからも自分のクリエイションを通じて
想像する楽しさや
自分の想像に可能性があることを
世の中に伝えていきたい
金田謙太
「3521+d」